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第2回IATSS国際フォーラム(GIFTS)

11月19日(土)に第2回 GLOBAL INTERACTIVE FORUM ON TRAFFIC & SAFETY シンポジウムが無事に終了いたしました。多くの皆さまにお越しいただき、誠にありがとうございました。
今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

ごあいさつ

(公財)国際交通安全学会は、1974年の設立以来40年間にわたって、交通及びその安全に関する調査研究等を通じて、望ましい交通社会の実現をめざして参りました。
この間、世界の交通をめぐる状況は大きく変貌しました。さらに今後10年間は、かつてない大きな変動が予測されます。次世代の交通社会をデザインするためには、環境・自然災害・エネルギー・福祉など交通に隣接する諸領域において、様々なニーズや価値を視野に入れた活動、世界の地域特性や文化的背景を踏まえた実践的な取組みが必要であると考えられます。当学会は、このような観点に立って、学術領域のみならず全ての交通に関係する者が参画する「超学際性(Transdisciplinary)」を重視した活動に取り組むと共に、価値観や文化の異なる様々な国・地域との持続的な「共創」を目指します。その一環として、2024年の創立50周年に向けて、国際的な討議の場としてのGlobal Interactive Forum on Traffic and Safety(GIFTS)を毎年定例的に開催することといたしました。昨年11月に開催された第1回GIFTS 2015では、各地域を代表とする有識者の方々にご参画いただき、地域ごとに異なる文化的背景における実践的な取り組みを報告いただくとともに、活発な討議が行われました。多くの課題がここで討議されましたが、なかでも強調されたのは、世界各国が連携して交通事故犠牲者の削減を可能にするために、事故実態や交通政策目標などの情報と課題認識をこれまで以上に共有することが必要であることでした。本年の第2回GIFTS 2016は、各国・地域における交通政策の背景・目的、政策立案上の優先順位の考え方などの地域的特徴をひろく「交通文化」ととらえ、様々な価値基準の中で、交通事故犠牲者削減の目標の考え方や方法論について共有し、事故のない社会(Vision Zero)への有効な方策について議論を行います。海外の有識者、交通行政に係わる実務者の方々に参画いただき、有意義な議論ができる機会とさせていただくことを期待しております。是非とも皆様の積極的なご参加をお願い申し上げます。

(公財)国際交通安全学会
会長 武内 和彦
国際フォーラム実行委員会
委員長 森本 章倫

開催概要

会議名: 第2回IATSS国際フォーラム(GIFTS)
会場: 国連大学 ウ・タント国際会議場(3F)
〒150-8925 東京都渋谷区神宮前5-53-70
会期: 2016年11月19日(土)
主催者: 公益財団法人 国際交通安全学会

開会挨拶

武内和彦
IATSS会長 / 東京大学国際高等研究所(UTIAS)サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長・教授

武内会長は参加者全員に謝意を表し、シンポジウム開会の挨拶を行った。本シンポジウムの目的は、絶え間なく変化を続ける世界や社会の状況に照らして交通安全の向上を図ることであり、その向上を成し遂げるためには学際的なアプローチを用いる必要がある。第1回GIFTSは昨年、交通事故による死亡事故削減を目標として開催され、そこでは、従来以上に広範かつ効果的な視点に立って交通安全の問題に取り組むため、各国間でデータを共有しなければならないとの指摘がなされた。

主旨説明

森本章倫
IATSS会員 / 国際フォーラム実行委員会委員長/ 早稲田大学理工学部社会環境工学科

森本教授は参加者に歓迎の辞を述べた後、交通関連課題の解決において最も重要なのは産官学の連携と協力であると話した。シンポジウムでは多くの交通安全の課題が取り上げられるが、活発かつ有意義な議論を望みたいとして期待を込めた。

基調講演

「Vision Zero:スウェーデンの科学に基づく交通事故死傷者数の削減戦略」
Ulf Björnstig

IATSS海外名誉顧問 / ウメオ大学外科主任教授(スウェ―デン)

Vision Zeroは、交通事故による死亡者・重傷者を決して出さないという社会の理想的な未来像を掲げている。これは、従来の「事故を予防する」という枠組みから、重傷者、死亡者の削減を目指す新しい枠組みへの転換点となるものであるとともに、交通システムの設計者と道路利用者はともに交通安全に対する責任を有するとの認識を示すものである。

 

また、Vision Zeroでは外傷エネルギーの役割についても考察しているが、この考え方はHugh De Haven氏、John Stapp氏らの研究成果に基づくものである。両氏の発見によれば、減速距離の確保に加え、安全ベルトなどの一定の装具の利用によって、人体は重篤な外傷(トラウマ)にも耐えることが可能であるとされる。後にHugh De Haven氏は、交通関連の負傷は非偶発的かつ予防可能な事象であることを指摘している。

 

衝撃速度のリスクで考えた場合、上記の要因を考慮すると、人体はかなりの衝撃に耐えることができる。このため、安全速度と停止距離を検討することにより、交通事故において生と死を分ける事態を改善することができる。安全な運転速度に対する責任を担うのは、国と地方自治体の交通当局である。スピード防止帯やスピードカメラなどの効果的な措置を講じることで、リスク軽減に役立てることができる。また、変形しない街灯柱や被害の元となりうるガード レールといった道路脇の障害物を取り除くことも、ひとつの策である。スウェーデン及びヨーロッパでは、EuroRAPが該当する道路脇障害物の特定活動を行っている。

 

正面衝突の防止は、交通システム所有者の責任である。大型車両が乗用車に衝突するという事故は増加傾向にある問題であり、衝突死亡事故全体の3分の1~半数を占めるまでになっている。トラックやバスが絡む事故での乗用車の乗員死亡者数(運転キロ当たり)は、乗用車同士の事故での死亡者数の5倍に達する。理論上、ヨーロッパでは、変形可能な前面をトラックに装備することで、死亡事故の3分の1にあたる900人の命を救うことができることになる。また、中央分離帯も正面衝突死亡事故の削減に有効な役割を担っている。現在、運転キロの4分の1は分離車線である。シートベルトの着用は死亡事故を3分の2削減することから、ベルト着用に関する啓発も必須である。スウェーデンでは、飲酒運転は深刻さを増す問題であり、飲酒と危険薬物は、スウェーデンにおける交通死傷事故要因の半数を占める。これは、10年前と比較して24%の増加である。

 

Vision Zeroは、さまざまな成功要因、問題要因に直面している。成功要因の1つは、スウェーデン道路安全部長であるClaes Tingvall教授が提示した問題を、スウェーデンの前運輸大臣であるInes Uusmann氏が承認したことである。加えて、Vision Zeroは、1997年に迅速に議会で可決された。Vision Zeroの導入に際して問題となったのは、道路行政やその他の交通当局が意志決定の過程で置き去りにされたと感じたことであり、これによってあらゆるレベルで抵抗が生じた。

 

交通安全データを見ると、スウェーデンにおける交通事故死者数は、2005年の440人から2015年の259人にまで減少した。スウェーデンの中規模都市であるウメオのデータによると、病院で治療を受けた負傷(致命傷を除く)の大半が自転車運転者によるものであった。乗用車の負傷は減っている一方、自転車運転者と歩行者の負傷に減少は見られない。

 

スウェーデン政府は2016年9月にVision Zero 2.0を発表しており、その焦点を、交通弱者、交通関連の自殺防止、衝突防止システムに置くものとしている。医学、工学、人的要因など、あらゆるレベルでの学際的な協力を進めることにより、道路交通の安全を実現することができる。

話題提供

冒頭、太田教授(IATSS理事/東京大学名誉教授)は、プレゼンターを紹介し、シンポジウムの進行予定について説明を行った。

「英国における交通安全文化の創出:政治的な指導力の役割」
Nicola Christie

ロンドン大学交通研究所(Transport Institute)所長(イギリス)

1987年、英国政府は全国を対象とする意欲的な死亡事故削減目標を掲げ、警察と病院から収集した全国データを基に目標値を算出した。目標は、1981年~1985年の平均値に対し、2000年までに死亡事故数を3分の1削減するというものであった。この数値は目標を上回る形で達成され、死亡事故は39%の削減、重傷事故は45%の削減となった。1999年には新しい目標が設定されたが、安全システム構築のアプローチを導入するとした2011年発表の「道路安全のための戦略的フレームワーク」に移行する形で、この目標は解除された。

 

英国では、2005年以来、死亡事故者数は大幅に減少しているが、交通事故による影響を過度に被る特定の弱者グループの存在が、次第に明らかとなってきている。英国における交通事故死の約半数が、歩行者、自転車運転者、二輪運転者などの弱者グループであり、その割合は、スウェーデン、デンマーク、オランダよりも大きなものとなっている。死亡事故の発生要因を1つに絞ることはできない。移動距離、交通機関の組み合わせ、自動車運転者・自動二輪運転者・歩行者の行動、道路使用者グループの組み合わせなど、影響要因は複数存在する。

「インドにおける道路交通安全の現状」
Geetam Tiwari

インド工科大学(IIT)デリー校土木工学部都市開発省交通計画主任教授(インド)

残念ながら、1970年代以降、インドにおける交通事故死は増加の一途を辿っている。この増加の原因を突き止めようとする際の問題の1つとして、データにおける大幅な相違や相互矛盾が見られることが挙げられる。

 

インドとアメリカにおける道路交通事故(RTI)の死亡事故と年齢別の人口分布を見た場合、15~29歳が最も多いことが明らかになった。また、1991~2011年の期間では、複数の100万人以上都市における10万人当たりの年間道路交通事故死者数が2~4倍の増加となっていることが分かった。加えて、インドの多くの都市において、道路交通事故死亡者の大半が歩行者と自動二輪運転者である。

 

インドでは、国家的な交通安全政策目標として、2020年時点で道路交通事故死の半減を掲げている。全国的なワークショップ、州交通安全評議会、道路安全基金、教習所の増設、交通安全教育の強化などが、目標達成に向けた措置の一例である。しかし、こうした取り組みにもかかわらず、インドにおける死亡事故者数は2012年以降も引き続き増加しており、政府は、道路交通弱者の数を実際よりも少なく報告し続けている。

「南アフリカにおけるVision Zeroの導入」
Marianne Vanderschuren

ケープタウン大学土木工学科交通研究センター准教授(南アフリカ)

南アフリカは全体として、先進国社会と第三世界社会が混在したような状況であると考えることができる。南アフリカの交通渋滞は深刻であるが、全世帯の約65%は車を所有していない。車を所有していない世帯は、徒歩や自転車などの非動力系の交通手段や公共交通に依存している。しかし、各地域には適切なインフラが整備されておらず、交通犯罪により、歩行者、自転車運転者、公共交通利用者が弱者となっている。

 

統計を見ると、南アフリカの交通安全率は出典によって10万人当たり23.5~32.5人の間であるとされており、交通事故による経済への影響は3340億~4870億ランドに上ると推定されている。多くの場合、被害世帯は事故によって稼ぎ主を失い、これによって貧困の増加がもたらされる。

 

南アフリカで死亡事故を半減させるとするVision Zeroの目標は、2050年までの達成を見込めそうにない。同国における目標達成の方法論では、次の5つの柱を基盤としている。すなわち、道路安全管理、道路安全とモビリティ、安全性を高めた車両、より安全な道路、衝突後の対応である。

「それぞれの選択とVision Zero」
赤羽弘和

IATSS会員/ 千葉工業大学創造工学部都市環境工学科教授

日本の5か年計画である第10次交通安全基本計画は、交通事故のない社会を目指すものである。同計画では目標達成のため、2020年までに年間の24時間死者数を2,500人以下、負傷者数を50万人以下とすることを目指している。この計画の重点対象は、高齢者と子どもである。

 

ある地域においては近年、人口10万人当たりの交通事故死者数が最悪の水準を継続している。その要因の1つとしては、他の地域と比較して交差点の2本の停止線間の距離が大きいことであり、さらに停止線間の距離に起因する事故数の増加は統計的に有意である。この交差点幾何構造の特徴は、地域社会の価値観も影響していると推定される。交通安全の改善のためのこの地域への提言として、交通事故の因果関係に関する地域の人々の理解に基づく市民 参加を促進することが挙げられる。

 

IATSS創立50周年に向け、現在、交通安全目標の設定における地域差の背景をより客観的、体系的に理解することを目的とした戦略的な研究プロジェクトが進行中である。このプロジェクトでは、統計値を相対的に検証するとともに、各国でインタビューを実施し、現在の交通安全対策に関する課題を概括し、提言を行う予定である。

ディスカッション

司会: 太田勝敏
パネリスト: 赤羽弘和, Geetam Tiwari, Marianne Vanderschuren,
Nicola Christie, Ulf Björnstig
太田勝敏
IATSS理事/東京大学名誉教授

司会の太田教授は、ディスカッションの進め方について説明を行った後、パネリストと来場者に対し、オープンかつ有意義な議論がなされるよう期待する旨呼びかけた。特に、伝統的な「3つのE、技術(Engineering),教育(Education),指導取締り(Enforcement)」について、Vision Zero では衝突があっても死傷事故を減らすというSafe system approach へといったパラダイムシフトが進んでいるとした。その上で具体的な施策についても新しい体系的かつ総合的な取り組みについて考え方の整理が必要であるとして、「戦略的4R(Reduce car use, Reduce crash risk, Reduce crash damage and Rehabilitation) アプローチ」を提案した。従来の、人・車・道路という道路交通システムの観点からだけではなく、交通全体を対象に、通常の道路使用、衝突事故、衝突事故後、そしてフィードバックといった経時的観点が重要であるとした。

 

Christie教授は、リソースを確保するために、地域レベルで政治的支援を得ることがこの過程における第一段階であると述べた。

 

Tiwari教授は、新しいアプローチを提示した。自動車利用の削減については、発展途上国の状況を踏まえて検討されなければならず、喫緊の措置としては、貧困国の都市開発に際して道路利用弱者を対象とする戦略を優先することが挙げられる。

 

Björnstig教授は、その新しいアプローチについては、現地の視点を踏まえつつ、社会的な状況を考慮する必要があると述べた。交通文化は、国ごとに大きく異なるものである。

 

赤羽教授は、政治的支援は、中央レベルのみならず、地域レベルにおいても重要であるとし、鎌ヶ谷市が地域レベルでそうした問題に取り組んだ際の方策について説明した。この点において、地方自治体の首長の意思決定は、極めて重要な意味を持つものとなる。

 

Tiwari教授もまた、政治的支援は必要であるとの意見を述べたが、啓発キャンペーンへの支援が容易になっている一方、具体的な科学的手法や長期的戦略を立案する仕組みには十分な資金が当てられていないとの指摘を行った。

 

Vanderschuren教授は、この課題に効果的に対応する方法として、さまざまなコミュニティの文化についての検討、および違反行動を変える方法についての検討を行うことが挙げられるとした。

 

 

★新しいアプローチを実現するための戦略について

 

赤羽教授は日本人の観点から、地域の人々にとって重要なのは、自己と家族の安全であると述べた。公共の場において、個々人は自らの安全のみならず、他者の安全も守るように動機づけられる必要がある。統計的に見て、誰しもが事故に 巻き込まれる可能性を有しており、この問題はあらゆる人に関わりのあるものであるとの認識を持つ必要がある。そのため、一般の人々を対象としたさらなる情報発信や教育の普及が求められる。

 

Tiwari教授は、統計的に確率の低い事象について一般の人の行動を変えることは難しいと述べた。交通安全の啓発キャンペーンはさらに大きな役割を果たしうるが、そのためには事故防止施策の実施による強化が必須である。

 

Björnstig教授は、医師が、交通安全の最後の砦であると述べた。医療機関からのデータは有用で正確なものであることから、さらにこれを積極的に活用すべきである。これによって、当該地域の観点から交通事情をより詳しく把握することができる。スウェーデンでは医療データの活用が活発になされており、一定の成果を上げている。

 

Vanderschuren教授は、客観的根拠に基づく教育が必要になると答えた。また、年齢や性別によって影響が異なることも認識する必要がある。運転者に飲酒運転を思いとどまらせる方法として減速帯を活用することも考えられる。

★新しい技術と交通安全の将来について

 

Vanderschuren教授は、南アフリカではUberが変革を起こしつつあると述べた。今やUberは飲酒後の移動手段の新たな 選択肢として定着し始めている。これに代表される革新的な取り組みの多くが、重要な役割を果たす可能性を秘めている。

 

Tiwari教授は、Uberは雇用主としての位置づけがないことから労働法をすり抜ける可能性があり、問題を引き起こしかねないとの見解を述べた。運転者が長時間運転をしていないとの保証は一切ない。

 

Vanderschuren教授は、Uberには各国で異なる規制が適用されていると述べた。南アフリカでは、Uberに対するさまざまな抑制と均衡のための措置が実践されてきた。

 

赤羽教授は、Uber以外の選択肢も見込まれると述べた。新旧の技術を併用したシステムをより効果的な形で活用することができる。例えば、飲酒後に自分の車の運転を代行者に依頼する代行運転サービスは解決策の1つとなりうるものである。

 

Björnstig教授は、スウェーデンにおいて大きな問題となっているのは、飲酒運転、大型車両による衝突事故、道路脇の障害物であると述べた。加えて、スウェーデンでは、速度違反取り締まりカメラに対する認知が高まってきており、今後、さらに積極的な利用が進むものと思われる。

 

赤羽教授は、IATSSが鎌ヶ谷市で実施されたプロジェクトについて触れた。同プロジェクトにより得られた結果はマレーシアに提供されており、ニアミスに関する情報の周知が図られている。マレーシアでは、道路上の障害をWeb上の地図で確認できるようスマートフォンを活用している。成功事例は世界中で共有し、相互に学び合うことで効率を高めるべきである。

 

Christie教授は、新しい速度管理技術が活躍することになるだろうとの見解を述べた。移動カメラや静止カメラと同様、車両感応式標識(Vehicle activated sign)も効果的である。幹線道路向けの管理システムも重要である。若年層の運転者を対象としたさらなる規制も可能であるが、モビリティに制約を課すことになるため、議論を要する問題である。交通安全に関しては、学究的な姿勢を維持する必要がある。

 

Tiwari教授は、低所得諸国も高所得諸国も同様に歩行者を最優先すべきであると述べた。歩行者にとって安全性の高い都市の実現は、今後、さらなる検討を要する分野である。これまで以上に多くのデータを集めるために、新しい技術を活用する必要がある。標準化されたナンバープレートはカメラによる撮影が容易であり、従来よりも優れたデータの獲得が可能となることから、運転者がより安全な速度での運転を心がける誘引となる。持続可能な開発目標(SDGs)では安全への直接的に7項目、間接的に5項目が言及されており、この目標の達成には、歩行者、非動力交通、公共交通のために安全なインフラの確保が必須である。

 

Vanderschuren教授は、技術の変化に関する提言について見解を述べた。酒気検知器は有用なものであるが、運転者に代わって他の人物が機器に息を吹き込むことが可能であるという欠陥がある。道路交通が安全性の高さを誇る国々では優れたインフラ整備がなされており、また、そうしたインフラの整備は教育や規制を効果的なものにするためにも必要不可欠なものである。

★客席からの質疑・コメント

 

・最初の討論参加者は、Vision Zeroについて質問を行った。その内容は、Vision Zeroがどのようにして広まり、同プログラムに対する確信はどのようにして築かれていったのかというものであった。また、Vision Zero 2.0.について、運転者を対象とする全体的な枠組みがどのようなものであるかとの質問がなされた。

 

・2人目の討論参加者は、速度低下の重要性を指摘して、障害との関連での適正速度についての国際的な基準値について質問した。

 

・3人目の討論参加者は、自転車と自動二輪運転者に関する質問を行い、これらが全体的な交通安全の枠組みにおいてどのように位置づけられているのかを尋ねた。

 

 

Björnstig教授は、Vision Zeroについて、当局による採用が迅速であったこと、それが全体の進捗において促進要因となったことを挙げて回答した。政治家の対応は迅速であり、また、その経済支援も十分なものであったことから、成功に結びついたのである。

 

赤羽教授は、マレーシアにおいて自動二輪車が事故に占める割合は70%であるとの指摘を行った。しかし、自動二輪車はマレーシアにおいて最も便利な移動手段のひとつであることから、その利用率が今後も高水準で推移することを前提とすれば、この問題を主体的に独自の発想で対応する必要がある。

 

 

Christie教授は、交通安全の実現には社会的な状況に対する理解が重要であることを強調した。

 

Tiwari教授は、大半のアジア諸国、特に農村地域では、自動二輪車が最も便利な交通手段であると述べた。このため、交通安全の実現は依然として解決を見ない大きな課題となっている。

 

Vanderschuren教授は、オランダで利用者の多い交通手段は自転車であると述べた。南アフリカでは、環境が異なることから、自転車の利用率は低いが、脆弱なインフラの整備状況を背景として、その死亡率はオランダよりも高いものとなっている。

★おわりに

 

太田教授は、自動運転がらみで安全運転支援技術が急速に開発されている中でそれらの革新的技術についての特性・可能性を十分に認識して、その利用法について工夫していかなければならないと述べた。IoTの利用をさらに先に進めることで、交通安全に関する正確かつ有用なデータの収集に役立てることができる。技術革新の動向を体系的に考察し、さまざまな背景状況を考慮して交通安全対策を進める必要があるとし来年のテーマとして提案したいとして、討議を終了した。

閉会挨拶

鎌田聡
IATSS専務理事

鎌田氏は、本年度のワークショップおよびシンポジウムの成果に対する大きな満足を伝え、シンポジウム閉会の挨拶とした。交通安全に対しては、かつてない学際的アプローチが進められている。IATSS創設以来42年間にわたり、当学会では、このような学際的アプローチを追求してきた。技術や交通安全の多様な側面について、世界規模での相互関連性がますます高まりつつある。これはすなわち、国際的な連携、特に先進国と開発途上国間における、より効果的な連携が必要であることを意味している。Vision Zeroは、国際規模で新しいアイデアを提示し、交通安全分野の転換点となる素晴らしい機会をもたらすものである。鎌田氏はこれらの言葉を締めくくりとし、本シンポジウムの閉会を告げた。

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