論文部門褒賞

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第37回 平成27年度(2015年)

論文表題:Is 30 km/h a ‘safe’ speed? Injury severity of pedestrians struck by a vehicle and the relation to travel speed and age
IATSS RESEARCH Vol.39,No.1 掲載

受賞者:Höskuldur R.G. Kröyer

受賞理由:

 歩行者への交通安全対策として、様々な手段で車両の走行速度抑制を図ることが重症事故の削減につながることはよく知られています。速度と重症度との関係性は、従来は当事者車両の衝突時走行速度で説明されてきましたが、本論文では事故発生箇所における平均走行速度との関係性で説明することを試みています。平均走行速度を用いることの狙いは、管理者視点での政策目標として設定でき、かつ観測も可能であるため、交通安全施策導入時の事故削減効果を見積もる際に、利便性が高まることが期待できるところにあります。
 本論文においては、既往文献のレビューを通して、車両形状、歩行者の年齢、走行速度や制限速度等の事故発生時の条件と重症度の関連性についての知見を整理した上で、平均走行速度に着目した分析がなされていないことを示しています。目的とする分析を実施するために、スウェーデン国内における人対車両事故データから、重症度が影響されていると考えられる事故データを抽出し、事故発生箇所において地点走行速度を調査しています。
重症度(軽傷、重傷、死亡)毎に平均速度と発生頻度との関係、歩行者の年齢層及び事故発生箇所の制限速度と重症度との関係性を分析しています。タイトルにある「時速30kmは安全である」という、これまでの交通計画における通念に対して、それほど確かなものではないと一石を投じ、年齢層毎にロジスティック回帰された平均速度-重症事故リスク関数を用いて、「死亡事故リスクは時速40km以下で小さくなる」「重傷事故リスクは時速35km以下でも比較的大きく、時速25km以下になると小さくなる」といった、よりきめの細かい示唆を与えています。
 本論文の方法論はわが国をはじめ、各所に普遍的に適用でき、かつ有用な成果をもたらすものであり、価値は非常に大きいものであると考えられます。

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