業績部門褒賞

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第39回 平成29年度(2017年)

業績題目:
サイドリザベーション方式による札幌市路面電車ループ化事業の取組み

受賞者:札幌市

受賞理由:

 札幌市は、人口約200万人の政令指定都市で、都市内の公共交通としては、JR線、市営地下鉄路線、バス路線のほかに市交通局が運営する路面電車が存在しています。路面電車は、昭和39年には総延長25kmからなるネットワークを構成していましたが、モータリゼーションの影響等で、昭和46年以降順次廃止されていき、昭和49年に8.5kmの一路線23駅となりました。利用者数は年々減少し、延伸前の平成26年度では一日平均約22,000人の利用となっておりました。路線は環状形状の一部が都心地区内駅前通上で分断されているかたちになっていて、両端点とも都心地区にあるものの400m離れていました。そのこともあり、路線沿線に多くの公共施設や観光施設が点在しているものの、必ずしも使い勝手はよくありませんでした。
平成13年には、利用者減少傾向を受けて、路面電車存廃の議論が高まってきましたが、札幌市は、平成17年に路面電車の存続、平成22年には路面電車の延伸を打ち出し、平成24年には、前記の400mをつなげる事業の具体化を推進しました。駅前通り上に400mの軌道を新設することにより路面電車路線が環状路線形状になるため、「ループ化事業」という表現になっています。
 ループ化事業は、路面電車に対して、地域内の移動に必要な交通手段として認知されること、低環境負荷のまちづくりに貢献できること、観光振興など活力あるまちづくりに貢献できること、都心の魅力向上に貢献できること、といった期待とともに、路面電車運営の効率化もめざすものであります。
 近年での、路面電車の短区間延伸は、1998年の豊橋東口駅前地区での150mにはじまり、富山市の大手町ルート900mなどが知られていますが、本事業は、以下に述べる点で、きわめてユニークかつ優れた取組みであるといえます。
 まず、対象区間の片側3車線(往復6車線)の駅前通り400m区間において、歩道側の1車線ずつを路面電車の軌道に割り当てた点であります。ほとんどの路面電車の事例で、軌道を道路の中央に敷設するのに対して、本事業では、歩道側の車線を軌道専用に変更しています(サイドリザベーションと呼ぶ)。そもそも車線数を減らしていることに加え、沿道での荷捌きやタクシーの乗降および客待ちなどとの調整について、接続する道路空間の活用などにより、合意形成を成し遂げたところに大きな意味があります。
 次に、歩道側を走行する軌道を活用して、バリアフリーの電停を新設したことです。歩道側軌道を活用して沿道とのアクセス性が優れている、段差のない停留所を設置しています。
 さらに、ループ化事業の約2年前から実施している、官民連携事例の「大通すわろうテラス」のような活動とのつながりも特徴的であります。
 これらに加え、低床車両増強、ICカード導入、運行情報提供サービス導入、他の電停のバリアフリー化を同時に組み合わせて実施し、結果的に、利用者数の増加を達成できている点も秀逸といえます。事業化後のアンケート調査などによれば、サイドリザベーション区間の空間設計や電停の使い勝手についても高い評価を得ていることが報告されています。
 一方で、事業化から1年半の間で、電車の運行阻害のようなトラブルはあるものの、交通事故は物損3件ということで、安全は担保されているといえるでしょう。
 以上のように、札幌市の路面電車のループ化事業は、十分な期間の議論を経て、きわめて短期の間に事業化を意思決定し、我が国に例のないサイドリザベーション方式での軌道建設のために、特に荷捌き車両やタクシー車両との調整を綿密に行い、さらに都心の賑わい向上の諸施策とも連動させている点で、きわめて優れた交通まちづくりの実践例として、高く評価できるものであります。

業績題目:
官民共同の総合整備事業による駅前空間の創出
-100メートル道路の創出を含む大分の挑戦-

受賞者:大分市・大分県

受賞理由:

 鉄道駅を中心とするまちづくりは、世界から注目されるわが国の大きな特徴であり、各地に成功例がみられます。その一方で、鉄道が街の分断要素となってしまっている例がまだ多くみられます。さらに、連続立体交差事業などのインフラ整備を行ったケースにおいても、駅アクセス交通への配慮が見られる一方で、駅前『広場』としての空間整備については課題を残す例が少なくありません。
 大分駅の周辺において、様々な施策を総合的に展開している本事業は、その観点からみて特筆すべきものと言えます。
 人口約120万人の大分県の県庁所在地である大分市は、人口約48万人の中核市です。大友宗麟公ゆかりの土地であり、文化的にも先進地として広く名前が知られております。
 その大分市の大分駅周辺地区においては、駅より北側は戦災復興の区画整理により都市の骨格が形成され、昭和39年の新産業都市の指定を受け臨海部に大規模な工場が進出する中、行政や商業・金融等の業務機能が集積されていました。
 一方、鉄道によって街が分断されていたため、駅の南側は発展から取り残されていました。
 そこで、①鉄道による分断を解消して南北市街地を一体的に発展させるとともに交通を円滑化すること、②駅周辺の低未利用地を解消すること、③大分駅への交通アクセスおよび交通結節機能を強化する
こと、④都心居住・生活ゾーンを形成すること、をマスタープランとして掲げ、大分県と大分市が役割分担をしながら総合的に事業を展開することになりました。
 平成8年度から、大分駅付近連続立体交差事業が始まり、同時に、大分駅南土地区画整理事業も始まりました。この土地区画整理事業は、発展の遅れていた駅南地区を主な対象としつつも、連続立体交差事業を前提として、駅の北口広場までを含むものでした。
 これらの事業により、13箇所の踏切が解消されるとともに、駅に2本の自由通路が生み出され、また、鉄道駅の南北を連絡する道路も生み出されたことで、南北市街地の一体化が図られ、さらに公共空間の整備や駅ビルの建設とも相まって、駅周辺の空間が一変したのでした。
 本事業でとりわけ特筆すべきは、土地区画整理事業のなかで生み出された幅員100mの「大分いこいの道」の存在です。減価買収や減歩によって幅員100m道路を新たに生み出したこと自体驚くべきことですが、幅員100mの横断面構成にも工夫がみられます。まず、100mの道路空間のほとんどを芝生地というオープンスペースにしていることは他に全く例を見ません。さらに、4車線の車道を片側に寄せることにより、反対側では、道路内のオープンスペースと沿道敷地との一体的利用を可能としています。
大分駅に最も近い交差点には複合文化交流施設であるホルトホール大分が立地しており、ホール前の空間からオープンスペースへの連続的な大空間が広がっています。
 そして、この広い空間を生かした各種のイベントが頻繁に開催されており、中心市街地の活性化にも大きく寄与しています。
 その「大分いこいの道」内の芝生広場整備にあたっては、計画の段階から多くの市民の意見を聞いており、施工の段階では市民植樹祭と銘打って約4,000人の市民の方に張芝や植樹に参加してもらうなど、計画から施工まで官民共同で行っています。
 さらに、その管理運営方式も特筆に値します。広大な芝生地を守っていくために、「大分いこいの道協議会」という市民ボランティア組織が設立されており、「誰もが主役、市民で育てるみんなの広場」という憲章のもと、市民主体の維持管理が行われています。
 北口、南口の駅前広場にも工夫が溢れています。北口広場は、「まちと駅をつなぐ、交通と交流の拠点となる機能的な広場」をコンセプトとして設計されました。大分ゆかりの、大友宗麟公や聖フランシスコ・ザビエルの像、さらに南蛮世界地図などの配置により、歴史の空間を演出し駅前広場の新たなシンボルとして駅を訪れた人を迎えています。
また、北口広場に設置されたトイレは、「竹宵」をイメージした5つの建物に分かれており、そのなかにはエアコン付き授乳室や盲導犬用トイレが含まれることなど、徹底的にきめ細かい配慮をしていることがわかります。
 南口広場は、「シンボルロード(大分いこいの道)につなぐ魅力発信広場」というコンセプトのもと、100m道路との連接性を重視した設計となっています。
 そして何より、どちらの駅前広場も車優先でなく、大きな交流空間を確保した歩行者優先の、人にやさしい駅前広場を実現しており、この駅前広場の大きな交流空間においても、各種のイベントが頻繁に開催されています。
 これらの総合的な事業の結果、土地区画整理地内の床面積や居住人口が大幅に増加しただけでなく、中心市街地への来街者数や小売店舗の売り上げが目標を上回るなど、中心市街地活性化が図られています。
 県、市、市民など、全ての関係者を巻き込んだ総合的な事業を展開することにより、わが国の特徴である駅周辺のまちづくりがさらに大きな成果を挙げられることを示す、きわめて貴重な業績であると判断いたします。

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