業績部門褒賞

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第40回 平成30年度(2018年)

業績題目:
情報通信技術によるトライシクル運営の新しい事業モデル導入と展開

受賞者:Global Mobility Service 株式会社

受賞理由:

 発展途上国の大都市の都市交通は、一部の地域で高架鉄道等の導入が進んでいるものの、多くは路線バスやタクシーなどで支えられています。実際には地域ごとにさまざまな形態の車両や運営がなされており、バスとタクシーの間の中間的公共交通手段と位置付けられています。これらの多くは生活の知恵に基づいた柔軟で使い勝手のよいシステムという面がある一方で、管理が非近代的であるほか、老朽化した車両を使い続けることによる安全性や大気汚染などの問題、さらには低賃金により運転手が貧困から抜け出せないなどの問題もあります。
 本事業は、フィリピンで地区内短距離移動や幹線バス路線アクセス手段などとして身近な足となっているオートバイベースの3輪のタクシーであるトライシクルについて、その運営の仕組みの中に情報通信技術を活用していくことで、運営の効率化、運転
手の生活水準の向上、その動機付けの強化などを実現し、結果として、ややもすれば前近代的ということで淘汰されがちなシステムを、近代的で効率的かつ運営者、運転手、利用者にとって信頼できるシステム、そしてさらには地域の貧困層の所得を向上させ、運転手になりやすくなるという雇用創出効果も含め地域により一層根付いてくシステム、すなわち持続可能な交通システムに高める道筋を示したものです。
 具体的には、フィリピンの貧困層の生活習慣、商習慣、トライシクルの運営実態を徹底的に分析し、それらをもとに情報通信技術を活用した車両管理システム、およびビッグデータも活用し、運転手への動機を含めた車両購入に必要なファイナンスの提供可能にするIoT×FinTechサービスを確立しています。
トライシクルが地域の交通サービスとして不可欠であることを確認し、低所得者層の中には現金をある程度所有しトライシクル運転手になりたいものの、金融にアクセスできないため今までの金融機関から与信が得られず、トライシクル車両の確保ができない人が相当数いることを踏まえ、かつ、信頼に値するトライシクルの組合があり、すべての運営者と運転手を管理していることを確認した上で、トライシクル車両のローンと管理の仕組みを確立しました。
 本事業では、トライシクルの運行状態を車両搭載のGPSや加速度センサー等で把握しビッグデータ化しています。このデータそのものを与信情報とすることで、通常では与信を得られない低所得者が車両ローン、運転手資格を受けられるようにしました。さらに、この運行データや支払い履歴は、運転手お
よび運営者の健全な事業継続を実現させ、トライシクルのファイナンス提供台数拡大へとつながりました。現在マニラでは、2016年には約1,000台であったローン車両が、2018年には約4,000台まで増加しました。これはトライシクルが近代的で持続可能な交通システムに変貌しつつあることを示しているといえます。同社は、さらに、同じスキームをライドシェアで展開し、インドネシアやカンボジアにも拡大しています。
 GMS社のビジネスモデルは、他の発展途上国において都市交通システムの近代化を通した持続可能な交通体系の形成にも展開可能なだけでなく、我が国も含め、運転手不足に直面している各国の交通サービスの維持発展にも適用可能であり、発展性が高い事業として評価できるものであります。

業績題目:
鉄道を軸とした地域との連携による地域価値向上の取り組み

受賞者:九州旅客鉄道 株式会社

受賞理由:

 平成元年の「ゆふいんの森」から始まった、特別なDesignと運行する地域のStoryに基づく「D&S列車」、さらにはクルーズトレイン「ななつ星in九州」の登場は、これまでの「交通手段としての鉄道」を超えて、「鉄道に乗ることそのものを目的」とする新たな方向性を提供しました。その結果、JR各社や私鉄に大きな影響を与え、JR東日本「トランスイート四季島」、JR西日本「トワイライトエクスプレス瑞風」、JR四国「四国まんなか千年ものがたり」、東武鉄道「SL大樹」、東京急行電鉄・伊豆急行「ザ・ロイヤル・エクスプレス」等の観光列車が誕生し、デザインという付加価値を加えることで、鉄道という交通手段が大きなビジネスの創出になることを示し、社会的にも認知され定着してきたといえます。
 しかし、JR九州のこれまでのD&S列車及びななつ星in九州の取り組みを検証してみると、列車のデザインだけではなく、「九州はひとつ」という理念の下、「九州の観光素材の情報発信とブランド化」、「自治体・沿線住民との連携」、および「二次交通との組み合わせ」を中心に、地域資源の価値を高め、地域と共に価値を生み出してきたことこそ
が、事業の持続性と成長性を支えている要因であることが判ります。具体的には、以下の点が評価されます。
1)「九州の観光素材の情報発信とブランド化」については、D&S列車やななつ星in九州の食事に地元食材を紹介し食材のみならず生産者をも紹介、車内設備に九州の木材や伝統工芸品を積極的に使用することで情報発信の役割を担っています。また、自治体や旅行会社と共に設立した南九州観光調査開発委員会(H15~H23)にて、「景観整備大賞(景観整備に取り組む地元住民や団体を表彰する)」や「魅力発掘大賞(南九州の観光素材を優れた視点で紹介した新聞、雑誌、テレビ番組を表彰する)」などの取り組み等を実施し、隠れた地域資源を掘り起こし支援してきました。更に、2016年からは「九州魅力発掘大賞」として全九州に対象を広げ活動を推進してきました。
2)「自治体・沿線住民との連携」では、沿線の住民が列車に手を振る「手をふレール運動」「千本旗プロジェクト(指宿地域)」や、地元駅でのおもてなしとしての「駅弁開発(嘉例川駅など)」「お宿ごとの料理(指宿地域)」「車内での焼酎PR(球磨
焼酎酒造組合)」等の企画、さらに加えて、各地のおかみさん会、ボランティアガイド、地元高校生との連携があります。これらは地域で自発的に行われている活動です。また、熊本地震の3週間後にななつ星in九州が運転を再開した折には、沿線住民は復興への希望の星と歓迎し、ななつ星を軸とした住民とのつながりが地元テレビでも大きく取り上げられました。九州北部豪雨後のゆふいんの森号の運転再開時には「Smile Again」の言葉の下、地元と協力してお出迎えを実施(地元参加者約700名)し、さらには平成29年九州北部豪雨後の久大本線全線復旧時にも「つながるプロジェクト」を沿線住民(復旧当日の地元参加者約7,000名)とともに実施するなど、地域との連携を深めました。
3)「二次交通との組み合わせ」では、鉄道だけでアクセスできる観光地は少ないため、「市内循環バス“じゅぐりっと号”(人吉地域)」「D&S列車に合わせたアクセスバスやタクシー観光(日南市・阿蘇)」や町歩きマップの作成等を行い、地域と連携
して実施しています。
 さらに、ななつ星in九州はその豪華さに注目が集まりますが、「九州各地をめぐりながら、食や自然や文化など九州の魅力を全国や世界に発信していく」ことが目標であり、沿線住民が列車に向かって手をふることや各地での様々なおもてなしは、沿線住民に自信と誇りを与えており、列車を走らせることの中に社会性や公共性があるからこそ、周囲への広がりが生まれていることがうかがえます。
 地方創生は日本にとって大きな課題となっており、JR九州の取り組みは、鉄道というインフラが地域のポテンシャルを引出し高めてきた「地域と鉄道の共存共栄モデル」と言え、今後、全国各地で様々に行われていく鉄道を使った取り組みが、単に豪華列車を走らせるだけでなく、“地域力”を高め持続的な活性化に繋がることが期待されます。
 その先駆けとなったJR九州の先進的かつ地域との着実な連携による成果は、他地域への広がりが期待されるものであります。

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