研究調査

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児童生徒等に対する効果的な交通安全教育を普及させるために何が必要か 〜教育普及スキームの構築研究〜

プロジェクトリーダー:小川 和久
年度:2019年, プロジェクトナンバー:1906

背景と目的

本研究の目的は、児童生徒等に対する発達段階に応じた効果的な交通安全教育を普及させるための要件(あるいは普及を阻害する要因)を明確にして、教育普及のためのスキームを構築することである。教育普及のスキームを構成する要素として、次の4点に焦点をあてて、戦略的枠組みを考案し、効果的な交通安全教育を国内外で普及促進させることを最終目標とする。4つの要素とは、①魅力ある教育プログラムの開発(児童生徒等の主体的な活動に基づくこと、興味関心を導く教育内容・方法であること)、②エビデンスの蓄積(児童生徒等の意識・行動が変容する教育であること)、③教材・評価ツールの開発(児童生徒等の理解を促す教材や能力向上を評価するツールを指導者に利用可能にすること)、④人(指導者育成)(教育普及に関わる指導者やモデレータの育成方法や教育支援に関する知見を収集すること)である。これら各要素について、学校現場での教育展開を通して実証データを積み重ね、構築しようとする教育普及スキームの適切さを検証していくものとする。

期待される成果

平成30年度の調査研究を通して示唆されたことを、前掲の教育普及スキームの構成要素と関連づけてまとめると以下の通りである。1)教育自体が面白く役立つ内容であると、自ずと子どもは主体的に学ぼうとする学習意欲を示す。とくに、本研究で開発してきた交通安全マップづくり教育やミラーリング法に基づく自転車教育(他者の行動を鏡として自らの行動を振り返る教育)は、身近な道路や交差点の危険が題材として扱われるため、自己関与(我が事として考えようとする意識)が高まり、子どもは興味関心をもって取り組もうとする。2)児童生徒等が意欲をもって学ぼうとする教育は、学校教員や関係者も興味関心をいただくため、普及を促進する原動力となり得る。後述するドイツにおいても、交通安全マップづくり教育やミラーリング法に基づく自転車教育に対して、関係者が強い興味関心を示していたことから、海外展開の可能性が示唆される。3)児童生徒等が普段実際に通行している交差点の画像や動画を、子ども主観のアングルで提示すること(具体的場面と関連づけた行動のイメージ化)で、横断時の確認行動が促されることが分かった。効果をもたらす教材づくりに関して、大きな成果が得られたものと考えている。4)簡便な評価ツールを用いて、横断時の確認率の変化など、子どもの行動変容を測定することができた。同時に、測定結果を教育に携わった学校教員にフィードバックすることで、教員の指導意欲および職務満足が向上するという現象が見られた。5)多くの学校教員が効果的な教育手法について悩みを抱えていることが分かった。教員を対象とした研修会等の機会を通して、本研究で見出された知見を共有することで、普及を阻害している要因を緩和することができる可能性がある。
平成31年度は、前述の調査結果を再確認すると共に、さらなる実証データの蓄積を通して結果の一般化を追求する。また、教育プログラム・教材開発等の成果を集約し、教育普及スキームの原案を作成するとともに、最終年度での国内外での展開に向けて準備を整えていく計画である。

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