交通指導取締り活動支援システム研究調査

「交通指導取締り活動支援システム」の公開を
開始しました

2023年度の研究調査プロジェクト2306B「人工知能を用いた効率的な事故防止対策に関する研究」の成果として開発した、「交通指導取締り活動支援システム」の公開を開始しました。

このシステムは、近年急速に活用が進む人口知能(AI)を活用し、効率的な事故抑止対策箇所を提案するものです。システムの送付を希望される方は下記にアクセスしてください。
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2306Bプロジェクト

人工知能を用いた
効率的な事故防止対策に関する研究

【プロジェクトメンバー】

プロジェクトリーダー:
森本 章倫(早稲田大学 教授)
IATSS会員:
加藤 一誠(慶應義塾大学 教授)
岩貞 るみこ(モータージャーナリスト)
中村 彰宏(中央大学 教授)
浜岡 秀勝(秋田大学大学院 教授)
中川 由賀(中京大学 教授)
田久保 宣晃((公財)交通事故総合分析センター研究部 次長)
特別研究員:
神谷 大介(琉球大学 准教授)
眞中 今日子(流通経済大学 准教授)
古川 修(IATSS顧問)
西田 泰
倉科 慧大(早稲田大学大学院 修士2年)
研究協力者:
栗原 豊季(早稲田大学創造理工学部社会環境工学科 4年)
オブザーバー:
古泉 貴志(警察庁交通局交通指導課 課長補佐)
箕輪 健二(警視庁交通部交通総務課 課長代理)
中西 健一郎(国土交通省道路局道路交通管理課)
渡邉 望(国土交通省道路局道路交通管理課)
小川 裕樹(国土交通省道路局環境安全・防災課)
鈴木 大健(国土交通省道路局環境安全・防災課)
寺奥 淳 ((株)建設技術研究所)
下原 祥平((株)建設技術研究所)
山脇 正嗣((株)建設技術研究所)
木村 拓憲((株)建設技術研究所)
杉浦 淳徳((株)インフォマティクス)
麻生 拓哉((株)インフォマティクス)
佐竹 絵美(日本電気(株))
小林 洸介(日本電気(株))

※所属はプロジェクト参加時点

研究概要

  • 1. 要旨

    第11次交通安全基本計画では、地理的情報等に基づき交通事故分析の高度化を図り、交通事故抑止に資する交通指導取締りを推進することを重点施策としている。これまで、国際交通安全学会では2014年から「交通取締りハンドブック」を作成して、交通取締りに関わる関係者への継続的な情報提供を実施しており、交通行政の現場からもビックデータを活用した効率化が求められている。このような背景を受け、本研究では急速に活用が進む人工知能AIを活用し、効率的な事故抑止対策箇所を提案するモデルを開発することを目的とする。
     これまで交通取締りは長年の経験をもとに、現場で効率的な取り締まり計画を作成していた。2011年からは交通取締り計画がPDCAに組み込まれ、事故実態や分析結果を反映した計画立案がなされているが、都道府県単位でシステムが異なり、担当者の技術力に依存することが大きい。本研究で提案する基礎的なモデルを実用的な事故防止対策の更なる進展において役立てることができれば、現場の経験とあわせてより効率的な交通事故抑止が可能となる。
     2022年度に構築した人工知能を用いた基礎的なモデルにより、交通取締りなどの事故防止対策の効果をGIS上で可視化することができるようになった。2023年度は、昨年度に開発した基礎的なモデルの妥当性や有効性について、実地での試行運用を踏まえつつ再検証した。これによって今後の汎用的なシステムの開発につながる基礎的な研究に寄与することができ、多様な地域での展開が期待される。

  • 2. 研究内容

    2022~2024年度の3ヶ年の研究計画のうち、2年目となる2023年度は主として、入力データおよびシステム改良とプロトタイプシステムの試行運用を中心に研究を実施した。初年度に構築した基礎的モデルの改良を行いつつ、実地での検証作業を通して、実用化する際の問題点や課題を明らかにした。

    図1 研究計画と「交通指導取締り活動支援システム」開発のフロー

    2-1 実用化に向けた基礎モデルの改良

    IATSSで開発した「交通指導取締り活動支援システム」とは、「事故リスク予測モデル」と「取締り効果評価モデル」を組み合わせ、モデルの算出結果をPC上で可視化することにより、取締り個所の決定を支援するシステムである。

    取締り活動提案モデルの改良としては、「報酬の見直し」、「ハイパーパラメータの見直し」、「方策の見直し」の3点を実施し、モデルの精度向上と運用面での改善を行った。

    図2 「交通指導取締り活動支援システム」の概要

    • ①報酬の見直し

      幹線道路・幹線道路同士の交差点といった交通量集中地点に対して,外生的にポイントを加算した。

    • ②ハイパーパラメータの見直し

      感度分析を実施して適切な値に設定しなおした。例えば、パラメータ更新時に利用する経験の相関を取り除き、学習を安定させる工夫を行った。

    • ③方策の見直し

      利用者が希望する活動箇所数に合わせて,計算対象を変更するよう学習ルールを変更した。これによって地域の実情にあわせた活動箇所の提案が可能となった。

      図3 「取締り活動提案モデルの改良(学習ルールの変更)

  • 2-2 交通指導取締り活動支援システムの試行運用

    2022年度に構築したプロトタイプシステムを一部改良後に、新宿警察署のご協力のもと1ヶ月間試行運用し、その導入効果を検証した。
    ・試行運用期間:2023年10月2日(月)~10月31日(火)
    (9月29日(金)に機材の設置、操作レクを実施し、10月2日(月)から試行運用を開始、11月1日(水)に機材を撤収、併せてヒアリング調査を実施)
     なお、システム利用については従来の街頭活動を主としながら、警察官が必要に応じてシステムからの提案場所を参考にする形とした。実際の運用では、システムが提案した12箇所のうち、10箇所で取締り活動を実施された。一方で、システムが提案していない4箇所でも警察官の判断で取締り活動を行われていることを確認した。

    図4 活動支援システムに用いたパソコン

    図5 システム提案箇所での取締り活動実施率

  • 2-3 交通指導取締り活動支援システムの効果検証

    システム試行運用期間の事故発生状況・ヒヤリハット発生状況の変化を分析した。2022年の同月の交通事故の発生状況と比較すると、当該地区全体の統計的な有意性は見られなかったが、明治通り・青梅街道沿いでの事故が減衰傾向にある可能性が高いことがわかった。

    図6 交通事故件数の削減効果の検証

    また、ETC2.0から得られた急挙動の回数(ヒヤリハット件数)を前年と比較したところ、地域全体での統計的な有意性は確認できなかったが、新宿御苑付近の明治通り・甲州街道においてヒヤリハットが連続して減少傾向にあることが分かった。また、前月の影響がある月初旬のデータを外したDID分析(差の差の分析)では、昨年に比べてヒヤリハット件数に減少傾向が見られた。

    図7 発生件数の差分
    (2022.10ヒヤリハット件数 – 2023.10ヒヤリハット件数)

    図8 年&2023年の9月・10月間
    (各月10日以降対象)の差分分析

  • 3. まとめと課題

    提案したシステムを1ヶ月試行運用した結果、運用面では十分な実用可能性を有していることがわかった。一方で試行期間が限定的であることもあり、地域全体での事故減少に目立った効果は現時点で確認できていない。現状入手している事故データは速報値であり、今後確定値を待って、多面的な視点から比較的長い期間で再検証する必要があるといえる。また、実際にシステムを利用した警察官からは、基本的な操作性は満足でき、警察の認識ともおおむね一致しているとの意見があり、「街頭配置を決定する上での参考になり、継続して利用してみたい」とのコメントを得ている。一方で、推奨個所の交差点名表示や事故発生履歴の検索など、システム改善に対する意見もあるため、継続的な改善が必要であるといえる。今後の本システムの改良においては、より多くの研究機関やシステム開発者が自由に検証や改善が行えるように、IATSSのホームページにて基本システムのダウンロードが可能なようにする予定である。

    最終年度となる2024年度では、他の都道府県警での活用を想定した際の課題を整理し、より汎用的な利用について検討を行う計画である。また、本システムの内容を追記した「交通取締りハンドブック」の改訂版を作成し、広く公開する予定である。

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