研究調査
research study
都市はウォーカブルになるべきなのか? -データに基づく分野横断的議論-
プロジェクトリーダー:村上 暁信
年度:2025年, プロジェクトナンバー:2514C
背景と目的
今日のまちなか整備で「ウォーカブル」は絶対的な善として位置づけられ,より歩きやすくするための工夫が数多く提唱されている。しかし,本当に都市はウォーカブルになれば良いのだろうか。本研究はこの問題意識に立ち,現在のウォーカブルシティの取り組み(空間整備・関連制度・ガイドライン)を弊害を含めて評価し,さらにウォーカビリティ向上と他の交通モードとの関係に注目しつつ議論する。メンバーが実測等から取得するデータをもとにして,多様な背景を有する会員をゲストとして招いて議論することで,今後のウォーカブル推進において考慮すべき点を抽出し,より良好なまちなか空間の創出手法を構築することを目指す。
期待される成果
ウォーカビリティの功罪については,具体の事例を対象に,利用実態,利用者の生理データなどをもとに議論する。昨年度の検討で,夏季には熱中症リスクが高い状況での利用が強いられていることが示されており,空間整備について先見性を有した議論が期待できる。さらに国土交通省の担当者を招いて議論を行う他,酒田市では市長を交えて交通ネットワーク全体の中でのウォーカビリティについて計画立案を念頭にして議論を深める。これらの議論を通じて,居心地のよい空間づくりについて画一的ではない空間像を提示できるとともに,整備上の留意点,交通計画との連携など,今後の施策展開に実際的に貢献できる知見を得ることができる。さらに,2024年度からはタイの2大学とウォーカビリティに関する共同研究を開始しており,2025年度にはバンコクでシンポジウムを開催する予定である。これらの機会を通じて,ウォーカビリティについての国際的な議論を深めることができる。