research study
広場・歩行空間における群衆行動の観測とその制御による安全性向上に関する研究
背景と目的
人口密度が高く狭隘道路の多いアジア的大都市において、広場・歩道空 間の歩行者群集による混雑は避けられない問題となっている。特に大規模 イベント開催地周辺また公共交通結節点(鉄道駅等)周辺の道路では混 雑が多発する。これら混雑は、歩行者の安全・快適、周辺交通への影 響、犯罪発生などに関わる。これまで、過去の経験に基づいた対策などが 行われてきているが、モバイル通信の発達やこれに基づいた群衆状態の把 握・誘導、さらにはこれらに基づいた空間設計に関する知見はあまり得られ ていない。本研究では、3 年間を通じて、国内外の専門家を交えて、広 場・歩行空間における群衆行動の観測と制御に関わる最新の知見ととも に、これらを交通流の制御や警備活動、空間設計に活かす方策の検討を 目的する。
期待される成果
これまでの群衆行動とその制御に関わる研究に関しては、施設内における イベントや災害時の避難シミュレーション等が行われているが、これらを広場 や道路空間、さらにその歩行ネットワークに適用した研究は殆ど見られな い。本研究では、1 年目の研究レビュー、事例収集により、国内渋谷ハロ ウィン、神戸ルミナリエでの観測調査とモバイルデータとの比較、2 年目のモ バイルデータに基づいた歩行者状態の解析、国際ハッカソンイベントを通じ た群集と犯罪の関連分析、画像解析事例のレビューを行った。とくにモバイ ルデータの活用により、群集及び混雑状態を把握できる可能性が示された ことから、今後は、オリンピックなどの大規模イベント時、災害対応など需要 増が見込まれる歩行空間において、群集状態の状態把握方策について 分析事例を増やすとともに、海外の関係する研究者との共同研究会等の 開催を通じて、国内の人流の誘導に基づいた群集状態の緩和策につい て、新たな知見を提供したい。