research study
生活道路の総合研究
背景と目的
交通事故が減少する中にあって、生活道路(幅員5。5m未満)のみにおいて増加ないし横ばいの傾向が続いているが、その要因はわかっていない(私自身マクロ分析を試みているがまだ成功していない)。本研究は、その解明に取り組むとともに、わが国にふさわしい生活道路のあり方を検討する。
①生活道路事故増加のミクロ分析
様々な性格をもつ複数の地区を取り上げ、事故件数に影響を及ぼすと思われる要因(流入交通量の変化、携帯の使用状況等)との関連分析を行う。
②Intelligent rat-runnerの存在確認と対策検討
「幹線道路の渋滞に遭遇した運転者が、カーナビの詳細地図を見て不慣れな生活道路に入ってきて事故を起こしてしまう」。増加要因の一つとして想定されるこの問題(Intelligentなrat-runnerと私は呼んでいる)を解明し、対策を検討する。
③共存型道路の可能性-わが国の生活道路の空間構成と交通安全
ここ数年、ヨーロッパのShared space(意図的に歩道を設けず、道路区間全体での歩行者優先を図るもの)が急に注目され始めている。ただ、ほぼ同様のコンセプトによるボンエルフ(70年代オランダ)がわが国では「紹介」で終わったように、わが国への適用性を深く検討しなければ意味がない。一方、歩道のない歩車共存型生活道路こそがわが国の生活道路の一般形であることを考えれば、その可能性を検証する価値は大きい。本研究では「紹介」を超えた「検証」を試みる。
期待される成果
①生活道路事故増加の要因分析
過去に調査実績のある複数の地区を取り上げ、流入交通量等の再調査や、携帯電話の使用状況調査等を実施し、事故件数との比較を行う(マクロ分析で共同研究を実施している埼玉県警との共同研究を想定)。
②Intelligent Rat-runnerの存在確認と対策検討
・運転者へのアンケート調査によるカーナビの利用実態分析
・携帯電話端末を用いた経路誘導サービスの利用実態調査
・生活道路事故の処理経験を持つ警察官へのヒアリング調査
等を通して解明を試みる。一方、生活道路への通過交通流入を抑制するためのカーナビのあり方(生活ゾーンの明示等)等について関係者と議論を開始する。
③共存型道路の可能性-わが国の生活道路の空間構成と交通安全
歩車共存型生活道路が普及しつつあるオランダ、ドイツ、英国を訪問し、現地での適用条件や事故の発生状況等について担当者への詳細なヒアリングを実施するとともに、ビデオ観測調査および速度計測調査により道路の利用実態を分析し、わが国への適用性を検証する。