研究調査

research study

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過疎地域における生活交通サービスの調達方策に関する研究

プロジェクトリーダー:喜多 秀行
年度:2002年, プロジェクトナンバー:H496

背景と目的

平成14年2月に実施された路線バス事業の規制緩和に伴って廃止された路線は3月末までの2ヶ月間に離島や過疎地域を中心に154系統に上った。この数を多いと見るか少ないと見るかは立場や見方によっても異なるであろう。問題はこの背後にある“廃止しようとしても廃止できない路線の数がその数倍にも上る”という状況であり、この事実が生活交通サーピスを確保する上で過疎地域が置かれている事態の深刻さを物語っている。
過疎地域では需要密度が低いため、路線バスをはじめとする公共交通サービスの維持・確保が容易でない。しかし、逆にみると、利用者が少なくかつ利用バターンの特定も比較的容易であるため、都市部では得がたい個々の利用者のニーズに沿ったきめ細かなサービスが提供できる可能性もある。また、住民自らが主体的に公共交通システムの計画作業に携わる体制をとる、あるいは地域が有するさまざまな交通資源の組み合わせをきめ細かく検討する、といったことも可能である。
平成12年度に実施した先行研究であるH296プロジェクト「過疎地域における生活交通サービスの提供システムに関する研究」では、路線バスによる生活交通サービスの提供に焦点を絞って理論と実証の両面から学際的に研究を進め、①住民属性ごとに行動パターンが大きく異なるものの各パターンの中では比較的共通した移動ニーズが認められる等いくつかの知見を見出した、②移動ニーズの充足度を運行ダイヤと関連づけて評価する方法を開発し、簡便な調査のみで路線バスによる生活交通サービスの提供水準を把握する方法論を構築した、などの成果が得られた。
本研究ではこれらを踏まえ、地域の特性と実状に即した生活交通サービスを維持可能な形で提供しうるしくみを構築するための検討を、特に「コミュニティによるサービスの自己調達」という観点から行う。

期待される成果

まず、第2章では、本年2月に施行された路線バス事業の規制緩和が現時点までにもたらした影響を、路線の廃止とバス事業者の経営という2つの側面から概観し、過疎地域で住民の日常生活に必要な足を供給するための工夫について考察する。
第3章では、地域共同体としての“集落コミュニティ’'に目を向け、各コミュニティの住民が生活交通に関する自らのニーズとそれに対する負担の許容範囲を明らかにすることを通じて、真に必要とする生活交通サービスを集落単位で選択し主体的に調達することの可能性を検討する。特に、これまで利用者が自分たちが必要とする生活交通サービスを選択しうる状況におかれていなかったことを指摘し、それを可能とするしくみづくりがこれからの生活交通サービス確保に新たな展開をもたらす可能性があること、住民、事業者、自治体の協働がそのための鍵となることを述べる。
第4章では、住民が主体となったバス路線の開設・運営のさきがけともなる青森県津軽地域、および廃止路線の復活方策を検討する住民の動きが新たな路線の開設へとつながった福島県いわき市の取り組みを例に、地域が置かれていた状況と開設に至る過程でのさまざまな模索や検討を紹介し、住民が主体となってバス路線の開設・運営を行うための方策と問題点を探る。
第5章では、公共サービスに関わる今後の新たな住民参加型供給方式を見据え、知識や情報を十分に持たない住民が主体となる公共財供給の意思決定がいかに可能であるか、および、公共サービスがもつ公共性とはいったい何なのか、という2つの問題点に焦点を絞り、住民主体の公共サービス提供問題を考察する。
第6章では、「集合的」財供給の視点から過疎バスサービスの「地域による自己調達」について検討する。生活交通サービスは本来それを欲する地域により自己供給されるべきものであるが、そのr技術」を持たない地域社会はバス事業者にサービス供給を委託せざるを得ない。ここでは、バスサービスが潜在利用者である複数の地域住民により集合的・協調的に自己調達されるべき交通サービスである、という視点から浮かび上がってくる規制緩和後の地方バスサービスの供給方法に関する問題点を整理する。
第7章では、集落単位のコミュニティが生活交通サービスを選択する上で、集落住民が互いの交通二一ズとコスト負担に対する態度を的確に認識し合うことがその出発点になるとの考えに立ち、そのための道具としてのバスダイヤや運行形態、費用負担等を説明要素とするサービス水準の選好分析モデルを開発する。
第8章では、前章で構築した選好分析モデルを用いて、住民が集落としてどのような生活交通サービスを選ぶべきかを検討するための作業を支援するモデルを構築し、事例分析を通じてその適用性を検討する。
 第9章では、本研究の成果を整理し、得られた知見を提言としてとりまとめる。

成果物

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