research study
地域社会が保障すべき生活交通のサービス水準に関する研究
背景と目的
地方自治体の交通政策担当者は、厳しい財政制約の下で生活交通サービスの提供方策を立案しなければならない。地方部では、生活交通サービスは非マイカー保有層が基礎的な活動を保証するためのサービスとして位置づけられるが、サービス水準を適切に設定するための考え方や方法論についての蓄積は、実務界はもとより学術界にもほとんどない。このため、利用者数が少なければ即座にサービスを縮小するなど、生活の保障という観点が不在のまま、生活の保障を責務とする主体が住民の生活を脅かす状況を作り出すことが懸念される。これは“望ましい交通社会”とは言えない。
そこで、本研究では、従来の公共交通計画の考え方を批判的に検討した上で、生活交通のサービス水準を設定するための方法論を構築する。
期待される成果
18年度は生活を支える基礎的な“活動の機会”に着目し、理論研究と実態調査を並行して研究を進めてきた。その過程で、移動制約が厳しい環境下では活動に関する“ニーズの切り下げ”が生じているという事実を指摘するとともに、確保すべきサービス水準の選定に関わる現在の混乱の多くが、①システムの“アウトプット”としての“路線密度や運行頻度”に関する評価と“アウトカム”である“実現可能な生活の質”に関する評価の混同、ならびに、②アウトカム指標としての活動機会の提供水準をすべて“需要者が提供者のもとに出向いて行う”ことを前提にしていたこと、に起因していることを浮き彫りにした。
そこで平成19年度は、活動機会の確保方策を公共交通に限定されない分野横断的な観点から検討し、実証分析のための調査ととともに以下の検討を行う。
①生活交通サービスの維持・拡充で対応することが相対的に効率的な地理的、社会経済的条件を明らかにする検討フレームの開発
②複数の活動種類ごとに必要な活動機会の獲得手段を、上記フレームの下で交通系と非交通系に仕分けし、全活動種類に関して統合することにより、生活交通の「サービス水準マトリクス」を導出するプロセスの構築
③地域社会が選択する最低水準の活動機会に基づき、地域公共交通計画を策定するための方法論的検討と試行